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SENNHEISER HD490PRO 以前からこのヘッドホンは素直な音だと思っていて、以前からそのうち欲しいと思っていた。 だがHD490 PRO無印はミキシングパッドは付くが、ヘッドパッドは付かない。デザインの統一性からヘッドパッドもミキシングヘッドパッドにしたい。でも無印は安売りするけど、PLUSは安売りしないので、価格差が1万5000円から2万円くらいある。なので3mのケーブルとケースとミキシングヘッドパッドの代金としては高いなと思っていた。ところがPLUSが最近安くなっていたので、「今でしょ!」と言うことで買うことにした。 このヘッドホンはSound Improverのテストに使おうと思っている。Fidelio X3やsignature PUREのように比較用に保管して使いもしないヘッドホンが増えても置き場に困るだけなので。実際困っている。Sound Improverのテストに使っているのを普段使いしてるだけで、別にこれらのヘッドホンが悪いわけではないけどね。 普段使いしているER4SRも歪が多くて音色の面では足りないと思うことが多いし、SRH1540ももうちょっと素直な音のが欲しいと思う場面が増えてきた。パッドも経年劣化で裂け落ちたので交換している。といっても交換したのは買ったときに付いてきたオマケのやつなのでこれも古いんだよね。交換したパッドもそんなに長く持たないだろう。というわけでぼちぼちテスト用の機材を更新したいとは思っているのだが、制作の関係上、機材が変わると以前との比較が難しくなるから時間的ロスが生じてしまう。下手したらひと月くらいはロスするだろう。なので重い腰がなかなか上がらなかったんですよね。とりあえず4000時間普通にエージングしてレビューしてから使おうと思います。 で、その音。エージングもしていない状態で聴いているのだが、このヘッドホンはHD600の上位互換だろう。音質に関してだけなら完全上位互換と言っても良い。。。完全上位互換は言い過ぎた。現状ではこのヘッドホンは空間の広がりがHD600に比べてもう一歩。 現状パッドも最初に付いているプロデュースィングパッドで聴いているのだが、音がやや丸いのを除けば素直な音で素性の良さを感じさせる音だ。ミキシングパッドにするともっとクッキリとした音になるだろう。世評通りなら、たぶん。まだ交換したことないけど。 エージングが全く進んでいないので解像度はそこまでじゃないけど、音色はかなり良く、そこがHD600との違いだ。HD600はバランスが良いだけで音楽的表現はそこまででなかったのだが、HD490 PROは音色の妥当性が高く、すっと受け入れられるような音を出す。周波数バランスで言うならHD600も似たような感じなのだが、それと音色の良し悪しは別。HD600は世評ではフラットでクリアで素直な音と言う評価だったが、個人的には色々足りてないと思うことが多かった。HD490 PROは現状エージングが進んだHD600よりも解像度は低いけど、音色が良いのでダメって感じにはならない。 まだエージングが進んでないことを加味して予想すると、だいたいHPT-700と互角かそれよりちょい上くらいのポテンシャルはありそうな感じ。うまくするとsignature PUREレベルの音は出せるかもしれない。なんにしてもこの素直さは他に代えられない良さがある。 音以外でHD490 PROの良いところ悪いところ書いておきましょう。 ■良いところ ・HD600よりも側圧は弱め。HD600シリーズの側圧きつすぎと言う人はこっちのほうが良いだろう。 ・スライダーロックはHD600ほど硬くないがそこそこ硬めで付け外しを繰り返してずれることはない。素晴らしい。これができているのは手持ちではHD600,HD650,K812しかない。 ・スライダーにはメモリが刻んであり、さらに5コマごとに線が長く刻んであるので、どれくらい伸ばしているかすぐわかる。これも出来ていないメーカーが多くて、刻んであっても線の長さは全部一緒で左右同じ長さに揃えるには、コマを一つ一つ数えないといけないという。開発者は作ってて自分で使いにくいと思わないのかな? ・イヤパッド、ヘッドパッドは洗濯対応で簡単に交換できる。ただし、ユニット前のサランネット部分は交換部品がないようなのだが、これもいずれ出てくるのであろうか? ■悪いところ ・スイーベル機構が付いていて、片手でハウジング持つとカクンカクンと傾いて落ちる。そのため持つときはヘッドバンドの首の部分を持つ必要がある。。。誰得機能だよ?これ。どうしてもスイーベル付けたいのなら自動車のドアみたいに2段階にしてほしい。一定以上の角度に回すには力を入れないと回らないようにする感じ。 ・ケーブル端子がmini XLRででかい。ハウジングが小さいのか肩に当たることはありませんが、邪魔くさいし見た目も野暮ったい。 ・スライダーの調節機構にあまり余裕がない。大体SRH1540やK812と同程度。K812と比べたらひとメモリ分くらい余裕があるけど、短いことには違いはない。私はちょうどいいところに調整したら、それが全開だった。要試着。 とスイーベル機構とスライダー長さ以外は特に大きな欠点はない。ケーブルが片出しなのも気に入らないのだが、自作すれば両出しにもできるので、一応選択肢は与えられているという感じ。 HD490 PROをしばらく触ってみて感じたのは、スイーベル機構はゴミだということを除けば、道具としての完成度は極めて高いということ。HD600,HD650並みか、スイーベル機構がなければ、HD600,HD650よりもアップデートされている部分があるので、それ以上の完成度と言って良いでしょう。 HD600,HD650よりアップデートされている部分は ・ヘッドパッドもバリバリで簡単に交換できるようになった。 ・スライダーにはメモリが刻んであり、もちろん一度セットすればHD600,650同様にズレたことはない。 もちろん、片出しケーブルや、ケーブルを左右どちらにも付け替えられること、スイーベル機構も人によってはメリットになるのだろうが、個人的にはないほうが良い機能だ。HD490 PROは両出しケーブルも付けられるようになっているのだが、ただ、ケーブルを両出しにしても、渡り線がくっついているという事実は無くせない。潔く両出し専用にして渡り線をなくしてしまった方が音質面では優位だと考えてしまう。あくまでPRO用製品なので機能を捨ててまで音質を追求するピュアオーディオ向けの製品ではないということなのだろうけど。 それからスイーベル機構は全く我慢できない。ハウジングを片手で持って保持することができないからね。メリットよりもデメリットの方が遥かにでかい。自動車のドアみたいに2段階にするとか何かしらの対策はしてほしいところ。 ではHD490 PROがHD600,650よりも劣っている部分は何だろうか? 端的に言うと部品のモジュール化という点ではHD600,650の方が優れている。工具無しでハウジング外せて、ユニットまで交換できるからね。HD490 PROはネジで止めてあるし、渡り線がある関係でHD600,650ほどには簡単に分解できない。 私はヘッドホンの進化の先には、部品のモジュール化、カスタマイズ化があると思っている。壊れたらそこだけ交換すればいいし、ヘッドバンドやイヤパッドが合わなければ、自分に合ったものに交換すれば良いわけです。音も変わっちゃうけど。逆に言うと音も自分に合うようカスタマイズできるとも言えます。 現状、そういったことができる最も最適なプラットフォームがHD600,650系のプラットフォームだと思っています。工具無しで分解できるので、部品の交換が容易だからです。例えば、側圧がきついとなったら、複数の大きさ、締め付け強さのヘッドバンドを用意して、交換すれば解決することができます。もっとも、その部品が存在しないので不可能ですが、メーカーがやろうと思えば、それができるプラットフォームだということです。HD600,650は20年以上前のヘッドホンですが、設計思想レベルで現代のヘッドホンは遅れていると言って良い。と言っても、そういったことが出来るポテンシャルがあると言っても、メーカーがバリエーション部品を用意してくれないことには何も意味がないのですが。。。 HD490 PROはヘッドバンドを簡単に交換できるほどのモジュール化はされていませんが、ある程度のモジュール化はされていて、ケーブル交換やイヤパッド、ヘッドパッドの交換は容易です。 特にイヤパッドをメーカーが2種類用意して交換できるようになっているのは、上であげたカスタマイズ化を具現化していると言えます。そういった意味では、HD490 PROの方が進化しているとも言えるでしょう。 ただし、音質的には頂点は一つだと思っているので、音質変える目的でのヘッドパッドの交換にはあまり肯定的ではありません。メーカーの人が「これで良し!」とした音で出してもらったらそれで良いと思っています。でも、耳の形状や頭の大きさが違うので、メーカーの人が「これで良し!」と出しても人によっては違った聴こえ方をするのかもしれません。そう考えると、イヤホンのイヤピースを変えるようにある程度ユーザーに投げたほうが良いのかもしれませんけどね。 カスタマイズ性ではヘッドバンドも簡単に交換できるHD600,650プラットフォームの方がポテンシャル自体はあると思いますが、結局部品がなければ意味がないし、HD490 PROは側圧がつよくないので、ヘッドバンドを交換したいという人も少ないと思われますが。個人的にはスイーベル機構のないバンドがあったらそれに交換したいですけど。もしくはヘッドバンドの首のところにハウジングの可動角を制限するクリップ部品なんかを取り付けられればいいのですが。 ただ、プラットフォームとしてのポテンシャルの話ではなく、ユーザーが現状出来ることだけで話をすると、HD490 PROの方が、イヤパッドの交換で音変えられるし、ヘッドパッドの交換も容易だし、スライダー部に刻みが入ってるし、側圧も緩めでより快適になっているし、HD600,650よりも道具として優れていると言って良いと思います。使っていて細部まで気を配って作られているのが分かる。ただし、耐久性だけはまだ分からない。信頼と実績ならHD600,650の方に分があるだろう。 ユニットが中央より下側にオフセットされています。ユニットが下にあったほうが空間把握がしやすくなるので、あえてそういう設計にしているのでしょう。 ヘッドバンドにはメモリが刻まれています。ちなみにこれで全開です。短い。 画像では見えにくいですが、ユニット裏には振動を受け止めるための梁状のアームが何本も通してあり、振動対策もされています。SRH1540もユニット裏に振動を受け止める支柱があり対策されているのですが、開放型でこういう対策をするのは珍しいですね。 ハウジングメッシュも特徴的で、内側に凹んでいます。これはなぜかわからないのですが、振動的に優位だったりするんでしょうか?HPT700も凹んでたし、何か意味があるんでしょうね。 ■追記_2025/03/31 236時間鳴らしたけど、HD490 PROはめちゃくちゃ良いヘッドホンだね。。 上ではHD600の上位互換と書いたけど、エージングが進むと低音が良く出るようになって、低音を少し盛った感じのHD650やSRH1540のような音になった。HD600の上位互換と言うよりはHD650の上位互換と言ったほうが良いかもしれない。 今までHD600にしてもSignature PUREにしてもHPT-700にしても何かしら自分の感覚に合わないところを指摘して「やっぱりHD650のほうが良い!」と言ってきたのだが、たぶん、HD490 PROではそうならないだろう。。。 というのはHD490 PROで聴いても、鳴らしきった時のHD650で聴いているときのような感覚が得られるからだ。いや、それ以上の体験かもしれない。この感覚を具体的に説明するのは難しいのだが、端的には「HD650ええわー」と感じていた感覚がHD490 PROでも得られるのである。比較的似通った傾向だからと言うのはあるだろうが、似た傾向でもHD600では得られないし、他のヘッドホンでも得られないので、音の良し悪しに関する部分でそう感じているのだと思う。たぶん音色の妥当性とか、自分の感覚にフィットするかとか、それに伴う没入感が関係しているのだと思う。そしてその感覚がHD650と同等なのではなく、「あれ?もしかして、HD490 PROのほうが良い?」とすら思えてしまうのである。なんせエージング時間236時間時点で解像度はHD650とほぼ互角、音色や原音忠実性はHD650を上回っているのだから。 そうなってくると、「HD650最強!HD650は神ホン!みんなHD650を買え!」と言ってきたHD650信者の私もHD490 PROのすばらしさを認めざる得なくなる。HD490 PROはそれほどの傑作だ。ちなみにHD650教は他の宗教との掛け持ちOKなので何も問題ないw と冗談はこれくらいにして、HD650好きなら気に入ると思うので聴いてみると良いでしょう。 ただし、すべてにおいてHD650を上回っているわけでなく、空間の広がりはHD650の方が広くゆったり聞ける感じだったと思う。空間が狭く窮屈な感じがするんだよね。エージングでマシになってきているので、エージングが進めば解消するかもしれない。 ■追記_2025/04/09 451時間ほどエージングしているが、236時間時から音が濁ってしまって解像度も若干低下して、HD650味が減退したり、回復したりまだ安定しない。一時期は出せてるのだから出せないわけではないと思うのだが。。。音質的にはK812をちょい上回るくらいかな。236時間時よりちょっと音質落ちたかも。だが、空間の広がりに関しては広がりの狭さや窮屈感はかなり改善している。それでもまだHD650には及ばないかなと言う感じだけど、わざわざ欠点として指摘するほどではなくなった。 ■追記_2025/04/22_769時間のシャッフル再生エージング 769時間ほどエージングしているが、空間の問題はほとんど解決したが、HD650味は減退したまま回復しないな。音質的には451時間時よりも濁りが取れたが、全体的な音質レベルはさして変わっていない。たぶん時間かかるやつだ。あと濁り濁り言ってるけど、K812で音が濁っているって感覚レベルの話だから一般的には十分クリアだと思う。 現状ではK812よりちょいいいくらいの音質で、最終的にはSignature PUREとどっこいかちょい上回るくらいの音質に落ち着くのではと思うのだが、HD650味が回復するかは分からない。。。現状では低音を盛っているとか細かな違いはあるが、全体的な印象はHD600に近いし、HD600の上位互換とはいえても、HD650の上位互換とは言えない感じ。 20251021_追記_5003時間のシャッフル再生エージング 5000時間ほど鳴らしたので追記。 試聴はHD120。 ■HD490 PRO(プロデュースパッド)の評価 5003時間鳴らして、音は相変わらず曇るが、音色は改善して「HD650ええわー」感は上がってHD650の85%くらい。かなり良いがそれでもHD650には及んでいない。"鳴らしきったHD650"はビブラートやエレキギターの歪が滲まずはっきりと聴こえてとても気持ち良く聴こえたのだが、HD490 PROではビブラートやエレキギターの歪が潰れて気持ちよく聴こえない。以前よりも改善しているが5000時間以上鳴らしてもHD650レベルには到達しなかった。というかこの点に関してはK812とどっこいレベル。"鳴らしきったHD650"はこのあたりが物凄く気持ちよく聴こえた。Signature PUREもなかなか良いけど、この点ではHD650には勝てない。あとHD650に及ばないなと感じるのがゆったり感とか音の広がり感。と言うのもHD490 PROはサイズが小さめで、HD650ほどゆったりには聞こえないし、音の広がりもこじんまりとしてしまう。楽器やボーカルの定位する位置は同じではあっても、なんか違うんだよね。この辺りはユニットの性能差と言うよりも筐体の大きさの違いだと思う。現にこの点に関してはK812と比べても劣っている。 解像度はK812の38%増し。HD650の11%増しと言ったところ。解像度に関しては、どうも236時間時とそこまで大きな差が出ないようだ。このヘッドホンに感しては。 「HD650ええわー」感も236時間時がピークでそれ以来HD650を超えていると感じたことが一回もなかった。一時的だが本当にHD650以上の音を出せていたのか、「期待を込めて☆5つ」的に評価が甘かっただけなのかは不明。 5000時間以上かけたのにここまで音質が大きく変わらないのもかなり特殊だなと思うのだが、HD490 PROのエージングに対するレスポンスの悪さはSRH1540のAPTIVフィルム(PEEKポリマー)みたいなベンゼン環や二重結合たくさん持っていて分子構造が強固な素材を使っているのかもしれない。硬いゆえに分割振動は起きにくいが素材自体のノイズが多い。SRH1540はSound Improverのテストに当初から使っているが、最初の数年は「なんでこんなにレスポンス悪いかな。性能大したことないんだろうな」と思っていた。nightowl carbonを好んで使っていた。「SRH1540は駄目だ。やっぱりnightowl carbonじゃないと」とすら思っていた。だがここ数年でSRH1540の評価は変わって、エージング波形に対するレスポンスも良くなって、音色の面でもnightowl carbonよりも良いので、SRH1540の方だけを使っている。SRH1540だけで十分だし、nightowl carbonである必要性もなくなった。 HD490 PROの場合も、SRH1540と同様に硬いからエージングに対するレスポンスが悪くて、そのくせ硬いゆえにノイズも多いから音質が低止まりする。そういう感じなんじゃないだろうか? HD490 PROの場合は音質も良いけど。だがしかし最高水準には程遠いし、この程度の音でこれ以上音質が上がらないならボコボコに言ってしまうレベル。 HD490 PROの場合も、SRH1540と同様に超長時間再生と特殊エージングで音質は向上する可能性はあるだろう。どれくらい時間がかかるかは分からないが、音楽波形とSound Improverの波形だと根本的に違うからね。でも最終的にはやってみないと分からないんだよね。 ■HD490 PRO(ミキサーパッド)の評価 デフォルトのプロデュースパッドでの評価は以上で、今度はミキシングパッドに変えてみました。 ミキサーパッド(デフォルトじゃないやつ)に変えてみた結果、音の曇りは無くなって、くっきりとした音にはなった。が、反面低音がかなり出なくなった。どちらかと言うと隙間ができて低音が抜けたような感じ。曇りがないのでミキサーパッドの方が良いって人が多いのも分からなくないけど、フラットかと言われたら、自然的な音ではないし、どちらかと言えば人工的なフラットネス。「不完全な音しか出せない現代の低レベルなオーディオ群の中では比較的フラット傾向だよね」て言うそういう感じの音。絶賛するほどではないと思う。 試す前は私ならミキサーパッドの方が気に入るだろうと思っていたので意外な結果になった。 プロデュースパッドとミキサーパッドの違いは まず、プロデュースパッドとミキサーパッドの間に拾える情報量には違いはありません。 プロデュースパッドは低音が豊かですが、付帯音が乗って音が曇ります。でも細部を聴こうと思えばちゃんと聴こえる。 ミキサーパッドは逆で低音は減りますが、付帯音も減ってクッキリした音になります。 ですが、付け加えると、ミキサーパッドは本体性能が追いつかないで本来出すべき微小音を出せていないのがあからさまにわかってしまいます。そのせいで音が痩せてつまらなく聴こえる。フラット傾向と言えども細かなニュアンスを伝えないので音に説得力が出ないし、妥当性のある音色が出ない。真っ向勝負の音ではありますが、それをするには明らかに能力不足です。磨けば光るかもしれませんが、現状ではプロデュースパッドの方が低音でるし音痩せしないから良くね?って気がしている。 プロデュースパッドとミキサーパッドの違いはHD650とHPT-700はどっちが良い音でどっちを選ぶかみたいなものだと思います。音もHD650寄りの音からHPT-700寄りの音に変化します。全く別物のヘッドホンになります。正確にはHPT-700の方がよりくっきりで先鋭化された音ですが、ミキサーパッドはHPT-700を少し鈍らして歪感を取った整った音に聞こえます。音質でもHPT-700の少し上レベルです。(HPT-700がHD650と互角くらい) また、HD600と比べると、ミキサーパッドはHD600をよりクリアにしてスピード感を増したような音。ただし、HD600の方が音の歪感は少ない気がする。HD490 PRO(ミキサーパッド)にはオーディオ臭い不自然なクリアさが僅かに付いて回る。だけどHD600の方は音がとろいし、モヤ感も多いので、全体的にはHD490 PROの方が素直で癖のない音と評価していいでしょう。 そう考えると能力不足とかつまらんとか辛辣なこと書いたけど、相対評価で言うとかなり良いヘッドホンではあります。 ■HD490 PROの音質の到達度 それでは、最後にHD490 PROの音の到達度に点数を付けておこう。Signature PUREの時と同様、K812を10点/100点として、大体、14点くらい。 ちなみに、K812の10点/100点と言う点数は低いと思われる人がいるかもしれない。点数のつけ方なんてなんとでも出来るからね。 例えば「あいうえお」が「あいうえお」と判別できる。これだけで波形の大体の相似性は得ているわけでそれだけで80点あげてもいいと言う人がいるかもしれない。ER4SRは周波数特性を持って「原音の90%以上を実現した!」とか言っていた。だがそういう基準だと、K812は80+10/100*20=82点くらいとなり、また、最下層レベルの音であっても80点とれちゃうわけで、最下層レベルのヘッドホンとK812が80点と82点の2点差しかないことになってしまう。 「ある程度いったら80点の音は出ていて、そこから僅かな差を詰めるのがオーディオだ」と言う人がいるけど、そういう人からするとこの点数付けは合っているのだろうが、これだと自分の感覚にそぐわないし、そもそもK812が80点も取れているとは思えない。 考え方を変えて、最下層レベルの音なら何点あげられるだろうか? 私の手持ちで一番音が悪いのってRP-HJE70なのだが、これがいったいどんな音なのか?と言うと、 まぁ、頭内定位ですよ。。。音源の空間情報を再現できていないとこうなる。K812と比べると、残響音がきっぱり消えているし、そんなものだろう。 このイヤホンはとてつもないドンシャリだが、恐ろしいのは高域が絶望的に悪い。ハイハットの音はチカチカうるさいだけで、金属を叩いているという質感がまるでない。バスはぼわついているが、ボーカルはそこそこ素直だと思う。そこが唯一の救いだ。 全体的には、情報量があまりにも少なすぎて音楽が簡略化された記号として出力されている。そこにRP-HJE70固有の癖を盛大に乗せて出力されるものだがから、自然さとか質感と言うものからかけ離れた音になっている。聴いていて楽しくないし、音楽を聴く音質レベルには全く達していない。 K812を10点/100点とした基準なら、RP-HJE70には1点もあげられない。音楽を聴く音質レベルに全く達していないのだから当然だろう。 ただし、RP-HJE70の名誉のために言っておけば、エージングはCDを適当に数百時間鳴らしてた程度で、K812のような長時間エージングはしていない。さらに数年ぶりに鳴らしたにも関わらず、再鳴らし込みもしていない。もしK812と同じエージング法なら差はもっと縮まったであろうことは言っておく。あくまで「最下層レベルの音なら何点くらい付けられるか?」という趣旨なので。 RP-HJE70も1万くらいするイヤホンだ。音は値段でないので、これより安くて音の良いイヤホンはあると思うが、これより音の悪いイヤホンも存在するだろう。そういう意味ではRP-HJE70は真の意味で最下層レベルの音ではない。でも、仮にそういうイヤホンを持ってきても点数で言うと1点以下の争いになるので、結論に大きな差は出ないだろう。 1点/100点のヘッドホンからK812のような10点/100点のヘッドホンに乗り換えたら、物凄く音が良くなったと感じるだろう。10倍点数が違うからね。それでもせいぜい10点だからそれより上の音が存在しますよと言うのが現状だろう。点数があまりにも低いと思われるかもしれないが、その方が点数付けとしてはしっくりくる。(そんな中たった3万で20点も出せちゃうSignature PUREすごくない?) それからK812の10点/100点と言う点数はこれでも甘めな点数だと思っている。なぜなら、Sound Improver 4の試作テストで使っているSRH1540が41〜42点くらいの音は出ているから。実際、K812とRP-HJE70との音質差よりも、SRH1540とK812の音質差の方が大きいのだ。Sound Improverは振動板を改質しているようなものなのだが、振動板自体の素材が変わったわけではない。それで40点以上取れるなら、振動板の素材開発からやるなら、つまり何でもありなら、K812を10点/100点基準での100点の音は現実的に達成可能だと思う。 つまりK812の10点/100点という点数すら甘いということなのだが、ではK812は何点くらいが妥当かと言われると、最終到達点と現在の音が離れすぎていて分からない。7点/100点が妥当なのか、5点/100点が妥当なのか。。。さすがに3点/100点と言うことはないだろう。。。と思いたい。 現状ではK812を10点/100点とするのがキリが良いし、その基準でも100点に到達することは当分の間ないだろうから、この基準を仮の点数として使おうと考えている。状況が変われば点数が変わってしまうかもしれないことは留意していただきたい。 加えて、この100点と言うのは「理想の構造、理想の素材で作ったらおそらくこれくらいの音になるだろう」と言う予想到達点であって、厳密には原音そのものでないことも留意してほしい。ここでの点数は音質を点数化しているというよりは、理想の到達点を100点として、その到達度を点数化しているものと言ったほうが良いでしょう。 K812を10点/100点基準として、 HD490 PROは14点、HD650が13.5点、HPT-700が13.3点、Signature PUREが20点と言ったところ。(※HPT-700は以前はHD650よりも音が悪いと評価していましたが、7000時間ほどエージングしたらHD650と互角レベルの音質になりました。) 個人的にはそれくらいの位置付けです。Signature PUREだけ抜きんでていますが、Signature PUREを除けばHD490 PROはHD650とかHPT-700のグループに属する音質でしょう。その中でほんの少しだけ抜きんでているかなと言う感じでしょうか。 ただし、プロデュースパッドならHD650に近しいキャラクターで鳴りますが、HD650の高域の表現力やゆったり感では負けてしまう感じなので、全てにおいて抜きんでているわけではありません。HD650の代わりになるか?と言われたら、ならないという答えになります。 また、ミキサーパッドだと付帯音の少ないより素直な音になりますが、自身の能力不足すら隠さないで出してしまう感じなのでそこらへんがリスニングには向かないかなと感じました。 そこいくと、Signature PUREは能力不足という点ではそこまで気にならないので、そこらへんはうまく処理されているんだなと見直す結果になりました。ただ、Signature PUREは言うなればジャンクフードです。「君たちバカ舌はこれくらいわかりやすくないと駄目なんでしょー?(砂糖ドバー(化学調味料だばー」な音作りです。あざとい音です。良い音だけど好きにはなれない。 ここまで書くとHD490 PROにはあまり良いとこないんじゃないか?と思われるかもしれませんが、先ほど「自身の能力不足すら隠さないで出してしまう感じなのでそこらへんがリスニングには向かないかなと感じました。」と書きましたが、逆に言うとそれだけ素直な音だと言えると思います。少なくともHD600,HD650,HPT-700と比べても装飾を排した音と言えるので、そういう音を求めている人には良いと思います。 ■HD490 PRO まとめ HD490 PROは買いか? HD490 PROは確かに良いヘッドホンなのだが、これはかなり悩ましい。。。制作の道具としてなら買う理由を見いだせるが、リスニング用途なら買う理由は見いだせないからだ。 リスニング用途ならプロデュースパッドを使いたいが、その使い方ならHD650の方が絶対良いと思うし、ミキサーパッドだと性能不足を露呈して物足りない感じになってしまう。性能不足はエージングノイズ流したら解消すると思うが、やってみないと分からない。なんせ5000時間以上再生しても200時間越えから音質レベルが大して変わらんヘッドホンだからな。 でも癖の少ない、飾り気のない音と言う点では突出しているし、ケーブルを左右に差し替えられるし、スイーベル機構で片耳で聴ける。イヤパッドもヘッドパッドも簡単に交換できる。そういう意味では機能面でも音質面でも製作用途には良いと思う。 リスニング用途だったらHD650のほうが良いよ!これ絶対! ■HD490 PROにsound improver 2.1を試してみた(追記) 上でAPTIVフィルムが云々で、分子構造が強固な素材使っているからエージングで音が変わんないんじゃないか?という勝手な妄想を書いたけど、書いてたらエージング波形を試してみたくなって、試してみることにした。レビューも書き終わったし元々sound improverの試作用に使う予定だったからね。試したのはこのサイトでも公開している「sound improver 2.1_24bit,44.1kHz_Don't turn up the volume. 6.48Hz_(3225-2)」 sound improver 4の試作波形の方が音良いのだけど、そもそもsound improver 4は完成してないし、みんなが試せないので、「みんなが試せないものでここで報告してもあまり意味なくね?」と思ったのでsound improver 2.1を使うことにしました。 このsound improver 2.1、公開する時にSRH1540やER4SRでテストして音質の確認はしているのですが、エージング波形を一回も通したことのないまっさらなヘッドホンに使うのは初めて。「sound improver 2.1はここで無料公開してるんだけど、これみんな効果感じているのかな?」と思うところもあって、まっさらなヘッドホンに入れてみてどういった変化があるか試してみたかったというのもあります。 とりあえず1.5時間ほど再生してみました。 自分の予想では5000時間流しても大して音変わらなかったのだから、すぐには音変わらないだろうと予想してたのですが、すぐに変わりました。これはびっくりするくらい音が良くなった。 まず、音色の色彩感がとても豊か。これが一番大きな変化。この点に関してはsound improver 4の試作テストに使っているSRH1540に匹敵するレベルだと思う。解像度や音の広がりについては及んでいないなと思いますが、音質的にはsignature pureよりも明らかに良い。直接比較はしていないが、そうでなくてもそれが分かるくらい音が良い。signature pureとSRH1540の間位の音質かな。音の到達度の点数がsound improver 2.1再生前は14点/100点くらいだったけど、それが倍くらいになっている感じ。28点/100点くらいかな。それよりちょい上かも。sound improver 2.1はSRH1540やER4SRだとsignature pureとどっこいかそれよりちょい上程度の音質に仕上がる感じなので、これは自分の想定よりも明らかに音が良い。これはHD490 PROのポテンシャルが良いということでしょう。 そのほかの変化としては現状ミキサーパッドで聴いているのですが、 ミキサーパッドを使用しているにもかかわらず、振動板が良く動くようになったのか低音が良く出るようになった。 それから、音がほぐれて音の硬いところが無くなった。 上のレビューで指摘したようなオーディオ臭い不自然なクリアさは無くなった。 それから、情報量不足による音痩せ。これも解消している。 レビューで指摘したこのヘッドホンの問題点は大体解消している感じです。 何より音色が非常に良くなったので聴いてて楽しい。 あと思い出したのだけど、「"鳴らしきったHD650"はビブラートやエレキギターの歪が滲まずはっきりと聴こえてとても気持ち良く聴こえた」というところね。この点でHD490 PROは劣っていたという評価だったけど、これがHD650レベルに到達しているか?と言われたら、残念ながら、改善はしているものの、あと一息足りていない。が言うてまだ1.5時間だからね。再生時間を延ばすか、波形変えたらHD650レベルは達成するか追い抜くだろう。実際SRH1540でも達成しているので。 レビュー書いてた時は「このヘッドホン何が良いの?」て感じで、HD490 PROは手放してHD650を買い直してsound improverの試作テストに使うことを考えたりしていました。ですが、HD490 PROは非常に高いポテンシャルがあることが分かったので、どうやら手放さなくても済みそうです。
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